きっと三蔵法師様もこんな道を通ったことがあるんだろうなあと感じ始めた20日・四日目、ほとんど植物がなくなり土と岩しかない道をすすんでいく。植物がないということはもちろん酸素が薄い・・・。そんな酸素が薄い状況の中、なんとか酸素をとろうと水をこまめにとっていく。水の化学式は「H2O」、つまり酸素を含んでいるので水から酸素を取り入れようと飲む。そして深呼吸を多くして、なんとか酸素の確保に努める。
それにしても景色は最高だ。キリマンジャロの山がすごく近くに見え、それをずっと眺めているだけでも、感動的だ。険しい山の雰囲気と雪をかぶって少し柔らかな雰囲気と、なかなか言葉では言い表せない。どんどん冷たくなる風に体力を奪われながら、その景色を見ながら一歩ずつ進んでいく。そして最後の標高4700のキボハットに到着。
この時点で、5人のメンバーのうち、私を含め4人が高山病や体力低下で苦しむ。ついてすぐに寝込んでしまった新井の親父、体調が急に悪くなったサブ、俺も高山病の兆候に苦しみながら、少しでも高度順応しようと休むことなく散歩を始める。そして目の前に広がる大きなキリマンジャロを見上げる。
「でけえな・・・」
そう思い武者ぶるいを感じる。こんなとんでもない山に挑戦しようとしてるんだ・・・と弱い心が顔を出し始める。それぐらい、とんでもない山なんです、このキリマンジャロ。 この日、食欲もほとんどなくスープを無理やり流し込み、19時過ぎに就寝。真夜中のファイナルアタックのため体力を回復しようとするが、あまりの寒さと高山病で一睡もできなかった。
そしてその日の23時、準備を始める。真夜中0時から始まるファイナルアタックのための準備にとりかかる。防寒のために何枚も服やソックスを重ね着して、背中とお腹にはホッカイロ、準備万端でいよいよ最後の登山がスタートした。
高山病対策のため、本当にゆっくりゆっくり登っていく。今までにないくらい急な山道に足をとられながら、進んでいく。しかし5000メートルを超えてから異変に気づく。呼吸が急に苦しくなり、頭痛と吐き気に襲われる。そして意識もはっきりしてるかどうかもわからないような状況になる。ただ一気に弱い気持ちが心の中いっぱいになる・・・。 その朦朧とする意識の中で、唯一覚えていること、それは何度も妻に言われた言葉。
「絶対、無理はしないで」
その言葉と俺の登りたいという気持ちが心の中で闘っているのがわかるのだが、5200メートル付近で、一つの決心をした。
「新井さん、俺降ります。」
と前へ行く新井さんに告げた。私の出した結果、それは下山することだった。ギルマンズポイントから見える最高の日の出、約20年後にはなくなるかもしれない最高峰ウフルピークに広がる氷河、いやそれよりも人生の中で一番の達成感、そのすべてを投げ出してたどり着いた結論、それが下山だった。
悔しさをかみ殺して、サブガイドとゆっくり下山し、キボハットへ戻った。そして、無理をした体をいたわるかのように、熟睡。トイレに行くこともコンタクトをはずすこともできず、深い眠りについた。
朝になり、登頂した二人が最高峰ウフルピークから戻ってきた。二人の最高の笑顔に正直素直に喜ぶことはできなかったが、なんとか笑顔で迎える。この時点ではまだまだ、かなりの悔しさが残っていた。結局メンバー5人中2人が登頂に成功。この数字だけでもキリマンジャロ登山が困難だってことがわかる。
その日の朝(21日・五日目)、そのまま下山が始まり、ホロンボハットまで降りる。そこで宿泊するのだが、ここで私の高山病が一気にヒートアップ。ほとんどごはんを食べることもできず、ただただ横になって休むだけという状況に陥る。この日が一番つらかったな・・・。 次の日の朝(22日・六日目)、雲海の中からゆっくりと朝日が顔を出す。その優しい朝日の光がすごくすがすがしく、うれしさでいっぱいになった。そしてゲートまで下山。朝はもうガタガタ、筋肉痛で普通に歩くこともできなかったけど、それでも気持ちはかなり満足感でいっぱいで、自然と笑顔がこぼれていた。そんなキリマンジャロ登山だが、もう一回チャレンジしたいかというと、もう絶対挑戦したくない。それぐらいつらく、大変だった。次は地元の鷲羽山か由加山に挑戦しようと思うこのごろ。そんなキリマンジャロ登山、登頂はできなかったけど、素晴らしい体験ができたと胸をはりたい。
4 件のコメント:
大変凄く勇気のある決断だったと思います。
そして素晴らしい体験登山でしたね
倉敷さん
普段なら無理をすると思うのですが、
今回のキリマンジャロは無理ができるような状況ではなかったです。
次回は倉敷の山を制覇したいと思います。
こんにちはー。
タンザニア旅行記読ませていただきました!
キリマンジャロ、本当に辛かったんですね・・。でも無理をしないで正解だったと思いますよ。登頂しなくても挑戦した事が素晴らしい。素敵な写真もありがとう~。ではではまた近いうちに!DODO
匿名さん
最後の言葉でだれかわかってしまいました。
また、飲み会の時にでもくわしいことをお話ししますね。それでは。
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