「お客さんの前では叱るな」
この日、ゲタスル更生院には日本からのお客さんが来た。ちょうどそのとき、子どもたちが木に登ってアボガドをとっていた。大事な食料となるアボガドを一生懸命木の上から落とす子どもと拾って袋に入れる子の一方で、ばれないようにアボガドをポケットに入れようとした子がいた。
いつもならアボガドを子どもたちにとらせるときは、職員が一人その様子を見ているものだが、この日は誰一人として職員はおらず、木の下は無法地帯となっていた。アボガドを盗もうとする子、落ちてるそばからアボガドを食べている子。そこで私の雷が落ちる。
“ Unafanya aje? Kwa nini wako wengi sana?”
「何しとんじゃ?なんでこんなに人がたくさんおるんな?」
そう言って大きな声で叱る。その時、日本からのお客さんとケニア人が来た。私はいつもと変わらず叱り続ける。正直、そのときはお客さんとのあいさつよりも子どもへの指導が大事だと思ったからだ。そして副マネージャーのオフィスに呼ばれる。
「ケン、お客さんの前で叱らないようにしてね。」
「なんでですか。子どもはアボガドを盗んでたんですよ。」
「気持ちはわかるけど、お客さんは慣れてないし、びっくりするから」
「・・・」
何よりも表向きを大切にするケニア人。この日も朝からいつものスケジュールを変更して、大掃除。そのため授業が1時間も遅れて、子どもたちの学習に支障をきたす。子どもたちよりも何よりも、お客さんを大切にして表向きばかりを良いように見せようとする。いつもの更生院の姿でなく、この日だけ特別な姿を見せる。こういうことに正直腹が立つ。いつもならみんな叱ることなのに、お客さんの前だから叱らない。喧嘩があっても、盗みがあっても見て見ぬふりをする。子どもの指導は、そのときが大事なのに・・・。
このようなことが時々ある。世間体を気にするのは日本でも少なからずあるだろうが、ケニアでは度を超えている。この日も体の中の腹立たしさをおさえながら、いつものように子どもと接した。
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