2010年3月8日月曜日

3月3日 実り始めた "Asante"


 私がもう一つ、2年前からゲタスルの子どもたちに巻いてきた種。
 それは “Asante”「ありがとう」という言葉の種だ。

 ここゲタスルで活動をした当初、あることに衝撃を受けた。それは、子どもたちが “Asante”や “Pole”「ごめん」という当たり前の言葉が言えないということだった。感謝の気持ちも、謝罪の気持ちも表わさない子どもたち。いや、素直にそのような想いを言葉に出していうことは、子どもたちのプライドが許さなかったのだろう。そこからほぼ毎日のように子どもたちに言い続けた言葉、それが “Asante”だった。

 毎日の何気ない生活の中で、お客さんが来て一緒に行うイベントの中で、カウンセリングの中で、いろいろな場面で一貫して言い続けた言葉だ。素直に感謝の気持ちを表に出せること、何も取り柄のない私にとって、唯一子どもたちにできたことは、この “Asante”と言い続けることだったのだろう。

 そしてその種がまっすぐ育ってきたことを今になって実感する。少しずつ前いた子どもたちから今の子どもたちへと伝えられた言葉。たった一言の言葉。それが今はここゲタスル更生院に広がっている。

 図書館での読書の後や授業の後、 “Asante”
 運動場の時間、一緒にキャッチボールをした後、 “Asante”
 ゲタスル更生院に来たお客さんから何かもらったときに、 “Asante”
 友達同士で助けあったとき、 “Asante”

 子どもたちの中に自然に、素直に感謝の気持ちを表すことが広がり始めた。そのことが一番の私の活動の成果。3カ月間しか滞在しないゲタスル更生院で、子どもたちに身につけてほしいことが、今芽を出し始めた。何気ないことだが、当たり前のことだが、子どもたちに一番大切な何かを残せたのではないかと強く思う。最後、2週間後、俺も子どもたちに伝えよう。心の底から “Asante”。

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